2022年食品値上げラッシュはなぜ?値上がり背景を解説

生活

2022年になってから各食料品の値上げが相次いでいますよね。

一般消費者であれば家計を逼迫することになるので、他人事ではいられないはず。

・食品の値上げはどうして?何が原因になっているの?

・値上げはこの後も続いていくの?

こんなお悩み・疑問をお持ちの方も多いと思いますので、お答えしていきたいと思います。

この記事のポイント
食品メーカー勤務が値上げの背景(原料高)について徹底解説
値上げ価格は続くのか?今後の展望を予想
むしろ値上げは遅すぎた?

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2022年に値上げになる食品一覧

2022年から製品の値上げを発表している企業・製品は以下の通りとなっています。

※以下に記載したものは値上げ製品の一部であり、他にも値上げとなっているものがある可能性があります。

【1月】
・製パンメーカー各種(山崎製パン、敷島製パン、フジパンなど):約4%〜14%
・小麦粉(日清製粉、ニップン):約1.5%〜9%
・ポテトチップス(カルビー):約7~10%

【2月】
・パスタ・パスタソース(ニップン、日清フーズ)約2.0~9.5%
・冷凍食品(味の素冷凍食品、ニッスイ、日清フーズ、マルハニチロ、日本ハム)約2~23%
・魚肉加工品(ニッスイ、紀文):約5~13%
・ハム・ソーセージ(日本ハム)5~12%
・食用油(J-オイルミルズ)1kg当たり40円以上
・ジャム(アヲハタ)3~7%
・ポテトチップス(湖池屋)6~11%
・醤油・豆乳(キッコーマン)約4~10%

【3月】
・マヨネーズ(味の素、キユーピー)約2~10%
・ハム・ソーセージ(伊藤ハム)4~12%
・チルド麺(日清食品チルド)6~12%
・冷凍麺製品(日清食品冷凍)6~13%
・醤油(ヤマサ醤油)4~10%

“Yahoo!ニュース『【2022年値上がりするものリスト】1月は食パン、2月にはアルミホイルが!?』https://news.yahoo.co.jp/articles/ee0643177616714c3f40ebd4830b4a5b59afa07f?page=2 より一部抜粋”

ご覧の通り、めちゃくちゃ多いです。

家庭で使用する食料品の大半が値上げと言っても過言ではありません。

それに値上げ幅も大半が1割〜2割程と大きくなっているので、家庭に与える影響は甚大です。

実際、日本銀行が発表している企業物価指数や輸入物価指数は記録的な伸びを記録し続けていいます。

なぜ急にこんな値上げが?という疑問に、次項から要因ごとに説明します。

値上げの背景 原材料編

さて、値上げの背景についてですが、本当に複数の要因が絡み合っています。

その中でも影響が特に大きいのが、われわれ消費者が手にする商品の原料が値上がりしていることです。

商品を構成する原料が高くなったら商品価格も高くなるのは当たり前ですよね。

実はこの食料品を構成する原料というのは、そのほとんどが2021年からとっくに高騰してきています。

特に原材料の中でも主原料と呼ばれ、構成比率が大きいものが値上がりしています。

主原料の高騰① 砂糖

まずご紹介するのが砂糖です。

砂糖は家庭でも馴染みの深い原料ですが、当然食料品にも沢山使われています。

砂糖は国産の原材料から製造されているのがおよそ3割〜4割と言われているのです。

つまり、6割〜7割は輸入に頼っているわけですが、2021年から輸入砂糖は値上がりを見せています。

輸入砂糖の価格推移はこちら。

出典:Trading View
2020年7月頃には10¢/lbs程度だった価格が、直近では18¢/lbsまで上昇しています。

一時期は20¢/lbsの値をつけており、1年間でおよそ2倍となっていることになるのです。

また、製糖メーカー各社はこの原料の値上がりを受けて、1年間で3回の値上げを発表しています。

砂糖の値上げによって多種多様な製品の値上げの一因となりました。

主原料の高騰② 油

続いて値上げしているのがです。

油には大豆、菜種、パームなど複数の原料がありますが、そのほとんど全てで値上がりを起こしています。

大豆に焦点を当てると、主産地はアメリカですが、2021年は中国の経済回復を背景に物資調達の面でアメリカから中国向けの輸出が急拡大した年でもありました。

さらに産地の天候不良などで生産量が減少した結果、世界的な需給がタイトとなり、各原料が大幅な値上げとなったのです。

ちなみに大豆の価格推移はこちら。

出典:Trading View

急激に価格が上昇していますよね。

大豆の価格は2020年8月頃には900¢/Bu程度だった相場が、直近では1400¢/Bu程度まで上昇しています。

また、砂糖と同じように製油メーカー各社ではこの値上げ幅を吸収できる訳もなく、一年で4回の値上げを発表した製油メーカーもあるほどです。

油の原料である大豆や菜種等の価格が急上昇したことによって、家庭用油やマヨネーズ、ポテトチップス等の値上げの一因になりました。

主原料の高騰③ 小麦粉

最後にご紹介する値上げ原料が小麦です。

小麦はパンや麺に限らず、和洋菓子や中華食材の皮など複数のものに使用されています。

そして小麦は流通している大半が輸入小麦ですが、輸入小麦は製粉メーカーが直接買い付けを行うわけではなく、

日本政府が一度買い付けを行った後で各製粉メーカーに渡される方式が取られています。

つまり、輸入小麦の価格というのは政府に決められており、「政府売渡価格」として年に2度国から価格を開示されています。

従って、この政府売渡価格が上昇すれば国内で流通している小麦粉の価格も値上げになるわけです。

その輸入小麦の政府売渡価格の推移がこちら。

農林水産省『輸入小麦の政府売渡価格の改定』https://www.maff.go.jp/j/press/nousan/boeki/210908.html より抜粋

グラフを見たら分かるように、直近の価格は前回の発表価格から19%の値上がりを見せ、2009年(平成21年)以来の高値をつけています。

円安の進行なども要因の一つですが、大きな要因は原料小麦の価格の上昇となっております。

ちなみに、小麦の価格推移はこのようになっています。

出典:Trading View

右肩上がりとなっていることが分かりますね。

小麦の価格は2020年8月頃には500¢/Bu程度だった相場が、直近では770¢/Buまで上昇しています。

小麦粉の原料である小麦の国際価格が約25%増加したことによって、パンや麺等の小麦粉製品値上げの一因となりました。

主原料の高騰④ その他

主原料の値上がりが食料品の値上げに大きな影響を及ぼしているのは事実ですが、主原料以外のものも値上がりが続いています。

特に大きいのは外国産の原料です。

特に中国では電力不足が深刻化しており(詳細な説明は割愛致します)、中国の製造工場では製造時間等に制限をかけられるなどの問題が発生しています。

後述する輸出用のコンテナ不足等の問題もあり、外国産(とくに中国産)原料の大変大幅な値上げが起こっています。

主原料以外の副原料も一部値上がりしているため、食料品の原価を引き上げています。

値上げの背景 調達コスト編

本項では原料の高騰ではなく、原料の調達にかかるコスト増について説明します。

食料品の原料は国産品も多くありますが、輸入品の割合が非常に大きいです。

なんせ日本は輸入大国だからね〜

つまり、この輸入にかかわるコストが増加すると必然的に最終製品である食料品にもコストアップとして影響が出てくるというわけです。

調達コストの高騰① 輸送費

この輸送費とは、主に原料を調達(輸入)する上で発生する海上運賃のことを指します。

最近ニュースでも取り上げられることが増えましたが、現在コンテナの生産不足や中国向け輸出の増大によって世界的にコンテナが不足しています。

それに加えてコロナ禍で感染対策のために港の労働人口不足等も発生しており、全体的にコンテナ船の回転率悪くなったことから、コンテナの海上運賃は大幅に値上がりしています。

その結果、コンテナ船を含む海上運賃相場が急騰してしまいました。

世界的な海運市況を把握するのに用いられる、上海航運交易所が発表しているSCFIの総合指数は、

2021年当初が約2800ポイントだったのに対し、2021年末には約5000ポイントの数字を記録しています。

輸入する際の海上運賃の上昇が食料品値上げに大きく影響しています。

調達コストの高騰② 為替(円安)

まず始めに、貿易はドル建てで行われるケースが多いです。

そして2022年1月現在、為替はドル高円安が大きく進行しているタイミングと言えますので、輸入業者からすると大変苦しい環境であると言えます。

三菱UFJ銀行『外国為替チャート表』
https://www.bk.mufg.jp/tameru/gaika/realtime/chart.html
米ドル/円 直近1年
三菱UFJ銀行『外国為替チャート表』
https://www.bk.mufg.jp/tameru/gaika/realtime/chart.html
米ドル/円 直近5年
三菱UFJ銀行『外国為替チャート表』
https://www.bk.mufg.jp/tameru/gaika/realtime/chart.html
米ドル/円 直近10年

上記の直近1年、5年、10年のグラフを見たら分かる通り、

今の米ドル/円の相場観がそれぞれの時間軸で最高値圏にあることが分かります。

食料品を作る上で必要な輸入品原料が為替によってコスト増となっています。

値上げの背景 その他

実は他にもまだまだ値上げ要因が存在します。

それが国内で食品等の配送を行う上でかかる配送費や、企業全体の人件費となります。

これらは長期的に右肩上がりとなってきているので、今回の食品値上げの直接的な要因にはなっていませんが、

慢性的に企業の財務状況を逼迫させていたことは間違いないので、こういった費用の上昇も企業が値上げに踏み切った背景の一つにはなっていると言えると思います。

その他 陸送運賃の上昇

日本銀行『サービス価格指数―道路貨物輸送』を基に筆者が作成

上記フラフは日本銀行が毎月発表している『サービス価格指数』の項目の一つである「道路貨物輸送」のデータ―をまとめたものになります。

自社商品を各販売場所に届けるにも、原料メーカーから原料を調達するにも道路貨物輸送が発生しますので、道路貨物輸送費が上がるとそれに伴って食料品の原価が上昇していきます。

道路貨物輸送費は2015年時と比較して2020年にはおよそ10%増加しています。

(※直近の発表である2021年11月は2015年比110.9%)

配送費の約10%の増加というのは、影響としてかなり大きいものであると言えます。

その他 人件費の上昇

正規雇用者と非正規雇用者の割合は年々変化しており、2002年と比べて2020年は非正規雇用者の割合が約8%増加しています。

総務省統計局『労働力調査』を基に筆者が作成

データーで見ると非正規雇用者が増加しているんだっていうのが実感として出るなあ

そして重要なのが、アルバイトやパートタイムなどの最低賃金は年々上昇しているという事です。

厚生労働省が発表している最低賃金によると、2002年と比べて2020年は約250円上昇しているようです。

アルバイトやパートタイマーの人件費上昇も企業のコスト増の一つにはなっているでしょう。

値上げの今後の展望

本項はあくまでも筆者の考えに基づく内容であり、今後の展開とは異なる場合がございます。

結論から申し上げると、この値上げ環境はしばらく続くと思われます。

なぜなら原材料コストや調達コストは現時点では下がっていくような材料もなく、食料品の原価は高止まりすることが予想されるからです。

そして、値上げ環境が続く最も大きい要因は、元々の価格が安すぎるということ

行き過ぎた価格競争によって、日本の食料品は非常に安く購入できる環境にありました。

食品メーカー各社は、従来の販売価格を見直し、適正価格での販売に移行する可能性が高いです。

安く購入できるのは消費者にとっては有り難いけど、やりすぎた価格競争は企業にとっては懐が痛い話なんよね〜。場合によっては事業存続に関わることもあるし!

ただし、日本は長期化したデフレ環境にあり、賃金水準も他の先進諸国と比べ全く上がっていません。

単純な値上げは家計を逼迫し、消費減退を招く可能性が高いので、今後は適正価格への移行に向けて政治や経済と連動した動きが必要になってくると言えます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

内容としては正直あまり見たくないものになってしまったかもしれません。

今後の度重なる値上げに備えて、今から節約を始めてみてはいかがでしょうか。

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